そのうち笑い話になるさ

得意分野は土曜の夜、日曜の朝です。

桐生戦兎は葛城巧の夢を見るか

劇場版 仮面ライダービルド Be The One オリジナルサウンドトラック

劇場版 仮面ライダービルド Be The One オリジナルサウンドトラック

劇場版 仮面ライダービルド Be The One
10000字を越えてしまったまとまりのない感想文。


公開初日の舞台挨拶も合わせて、5回観に行ってきました。ネタバレ込みの最っ高だったところ、いまいちだったところなどをつらつらと。

結論から言えば、よかった。めっちゃよかった。万人にウケるかどうかはわからないけれど、少なくとも自分の琴線には触れまくった。劇場版に限って言えば、ビルド(桐生戦兎)ってめちゃくちゃ仮面ライダーしてたんじゃないかなって思います。敵に改造される、バイクで逃げる、民間人に恐れられ疎まれる、仮面で顔を隠して戦う、地位も名誉も関係ない、すべては愛と平和のために……。


今回、物語のテーマは大きく分けて2つ。

・相棒とのベストマッチ
(桐生戦兎と万丈龍我の絆)

・ビルドが戦う理由の追究
(桐生戦兎と葛城巧の対比)

それでは順を追って、考えてみたいと思います。

桐生戦兎と万丈龍我の絆

宣伝的にも、プレバンでクロビル缶を売りたい商業的な意味でも、1年間ふたりのやり取りを見続けてきた身からしても、やっぱりこのテーマをメインに期待していったところはあるんですが、万丈のぶちギレも洗脳も融合も、あまりに急展開な感じは否めなかったなぁ。美空や内海の不遇は置いておくとしても、戦兎と万丈の合体までの絆の積み重ねは、映画内だけでは描写が足りていないので、そこは本編でしっかり復習してから映画を観ないと十分に楽しめない気がしました。万丈の変身&強化フォームお披露目回はすべて名作。


(特撮アカウントで書き出してみたんだけど、マジで万丈、パワーアップのきっかけが全部、戦兎のピンチだったの熱すぎる!)
(黒幕と忍パパがそうなるように導いていたわけだから、こうなるのも当たり前なのよね……!)

戦兎と万丈の出会いは、敵によって仕組まれたものであり、すべてはふたりを利用するための計画の一部にすぎなかった……と告げられた戦兎が、一度は本編同様に心を折られるものの、滝のような大雨に打たれながら、精神世界のもうひとりの自分と対話して、出会いは仕組まれたものだったかもしれないけれど、万丈との絆は幻なんかじゃないと、オルゴールバージョンのBe The One 流しながら急に思い出したように万丈万丈し始めるのはもうまさにビルド。片方がいなくなると片方が盛り上がり始める感じがまごうことなきビルド。

もうね、モーセのごとく民衆を割った戦兎が、恐ろしく美しい手さばきでボトルをはめ込んでジーニアスに変身し、ブラッドから煽られまくった末に絶叫して兎ボトル金色に光らせて「万丈……おまえの命(取り戻させて)もらうぞ」つって、万丈絶対取り戻すモードに入るとブラッドへ金兎バスターの一撃をぶち込み、ブラッドから切り離された万丈の手をジーニアスが掴んで、万丈をかばってブラッドに背を向け、ぶちギレたブラッドの攻撃が案の定、背中に直撃して万丈ごと吹き飛ばされ、万丈と変身解除された戦兎がごろんごろん転がり、起き上がった戦兎が「……万丈!」って起こして、万丈が「……戦兎?」って全然状況を把握できていない顔をするこの一連の流れこそが仮面ライダービルドだと言いたい。圧倒的ビルドイズム。そうだよ、これこれ!

もう、あのジーニアス戦に戦兎と万丈の良さが詰まってた。個人的には、Be The One のオルゴールバージョンが流れた場面と合わせて100回くらい見返したい。このあと、万丈は相棒モードに突入して銀龍ボトル受け取って「絶対にできる。俺とおまえのボトルなら」と目を細めてエモいこと言い始める戦兎と、状況をよくわかっておらず「龍と兎だぞ。そんな組み合わせ、無理に決まってんだろ」と身を引こうとしたら巻き込み事故に遭う万丈との温度差がすごく微笑ましい。戦兎と万丈って、どちらか片方が盛り上がってるときもう片方は妙に冷静で面白いよね。

思えば、本編途中で桐生戦兎が葛城巧に戻ったり、葛城巧大好きな氷室幻徳が出てきたり、猿渡一海が万丈の相方っぽくなったり、ヒゲポテトなる濃すぎるコンビが爆誕したりと、ここ最近は若干薄れつつあった「戦兎と万丈」のベストマッチ感。クローズマグマとビルドジーニアスの登場を最後に、このまま、真司と蓮、天道と加賀美、晴人と仁藤くらいのゆるゆる仲良しライバル相棒ポジションとして終わると思っていたら、そうは問屋が卸さなかった。

戦兎と万丈、合体したのである。
(知ってた。)

それも、ライダーのチカラだけがアイテムに移動して、だとか、精神だけが片方に乗り移って……などという甘っちょろいものではない。文字通り、身体も巻き込んで一体化したのだ。万丈が(心の準備もできないまま)後ろから戦兎の身体にプレスされた。まさかの物理合体。そんな、奇跡のフォーム。飛天の間で劇場版の予告が「ラビット!ドラゴン!ベストマッチ!」って流れた時からわかっちゃいたけど、最高じゃないですか。

言うても、ダブルの合体ってフィリップが意識飛ばして気絶、あるいは身体がデータとしてアイテムに吸収だったし、チェイサーマッハは片方アレしてからのダチの形見分けだし、ハイパームテキはパラドが永夢先生に取り憑いての単独変身だし、メテオフュージョンステイツはメテオの力がフォーゼに乗り移った流星置いてきぼりパターンだったし、なんとも思わなかったけれど、クローズビルドは視覚的に思いきりよくバチコーーーンと合体して、わかっちゃいたんだけどそのあまりにも雑な合体方法がなかなか衝撃的で笑、真面目に考えちゃった。

なんだろなぁ、永夢とパラドのように片方がウイルスだったり、ウルトラマンとハヤタ隊員のように片方が純粋な異星人であったりするなら納得できる。ところが、桐生戦兎も万丈龍我も生身の人間。万丈は異星人寄りではあるが、出生は横浜の産婦人科、しかも一度は完全な人間に戻った身のはず。まさか物理学をコンセプトに盛り込んだ仮面ライダーで、人間が物理的に合体して一体になるライダーを見る日が来るとは思っていなかった……大変不躾な質問で恐縮ですが、身体どうなってんの!?笑

液状化したり分身したり怪獣然とした姿に変わったりと、身体どうなってんの、と言いたいライダーは案外多いので、まぁ今さらっちゃ今さらか!)

やたらグレートクローズを推していたことから推察するに、万丈はドラゴンエボルボトルを奪い取ることで人間辞めたからセーフ!なのであろうか。仮面ライダーブラッドにも、なんだかわけのわからない赤いドロドロとして吸われてたし。そういえば、万丈に寄生した地球外生命体エボルトのお家芸のひとつが、謎肉塊を人間に取り憑かせる、というものであった。万丈も、ヤバいと思った瞬間、エボルト遺伝子を発現させて桐生戦兎のどこかからいい感じに潜り込んだのかもしれない。天才物理学者もめずらしく「これは物理法則に反して……」だとか「わからないけど、いくぞ!」とか言って、原理を説明できずに焦ってたのがとても好き。

これまで散々、互いを思いあってきた(ゆえに互いを傷つけた)描写があった戦兎と万丈が、ここに帰着するのは、わかっちゃいたけど熱いです。

奇しくも戦隊のほうとまるっきりネタ被りしていた(これは個人的に残念……)けれど、ルパントリコロールやパトレンU号がいたからこそ、業務的に合体して仕事をする人たちがいるんだもの、ベストマッチな戦兎と万丈が合体してもなんの不思議もないよね!と言いきれたのかもしれないね。急に合体したら風当たり強そうじゃない、なんとなく。だから、同時上映の戦隊がルパパトだったことにも意味があったような気はするのよね。絶対やるだろうなと思っていた「被せてくるんじゃ、ないよっ!」の二人羽織が楽しい。身体はひとつで頭脳はふたつなのだから、背中が痒くなったらつい両手で掻いちゃったりするんだろうか。右手と左手でケンカしちゃったりするんだろうか。この件については、アバンのOPコントよろしく自分たちの状況に突っ込み入れまくる戦兎と万丈が見てみたい!

いやー、おかしい。ここまであからさまな男ふたり推しなど、本来ならば絶対自分の琴線には触れない(ダブルにもオーズにも上手くハマらなかった*1)はずなのに……こんなにもハマったのはなぜか。と考えると、他のヒーローと違って、両者そろって(←重要)おまえと変身なんざ二度とあってたまるか(言いつつめっちゃ笑顔)みたいな関係性ってあまり類を見ない気がして、その普通っぽさというか俗っぽさというかが、ああもうベストマッチで尊いなぁって気がしております。ボトルが元に戻ったことを聞いて、ほんのちょっとだけ残念そうに「あれは奇跡のフォームだったってことかぁ~」って万丈が言ってたけれど、再変身も見たいような見たくないような……いや、やっぱり本編の最後の戦いで見たい!!!万丈もしっかり準備ができている状態での、どシリアスなふたり変身も見てみたい!!!*2

あれだけ軽口ばかり叩きまくって、なかなか具体的な万丈想いの言葉を発してこなかった生粋のツンデレ桐生戦兎が「おまえにはわからない。あいつは、単細胞で、筋肉バカで、騙されやすい。けど、誰かの明日のために戦うことができる。俺の大切な相棒なんだ」と、葛城巧*3という“万丈龍我を倒すことしか頭にない自分自身”であり“誰も信じられなくなった過去の自分自身”に向かって宣言したのは、もうそれだけで劇場版を観たかいがあったってもんだし、ラストのハイタッチも、ふたりの関係の集大成って感じですっごくよかった。*4 戦兎を見ずに腕を差し出した万丈と、戦兎が一度大きく後ろに振りかぶってから思いきり腕をぶつけるのが、うおおおー、いつもだったら態度が逆じゃん!!!!?桐生戦兎めちゃめちゃ軟化したなぁ!!!!!って感じでたまらなかった。

万丈を理屈攻めにする戦兎も、その理屈っぽいところがバカなんだよっ!な万丈も、よかった。いやー、いいわ、さすが、10年前から親公認の相棒。

まったくもってどうでもいい話だけれど、桐生戦兎からの電話(OKOS)で、映画公開日に横やり入れてきた万丈が「戦兎! せんと!! せんとぉ!!?」って3回呼ぶのが、1回目2回目と文句言う口調なんだけど、戦兎が反論してこないのでダメ押しの3回目を叫ぶのが、おまえ、最初は「おっさん」やら「あんた」呼びしてたのに、しつこく3回も名前を呼ぶ間柄になって……つって死ぬほど好きなので、軽快な軽口の叩き合いが似合うビルドこそドラマCD化するべきだと思います。あと、ふたりでユニット組んで歌ってほしい。戦兎はギター、万丈はピアノでもいい。まだ諦めてない。*5

操られるままビルドに蹴り食らわせてハザードトリガーを奪い、戦兎の手を払い、伊能にビルドドライバーを渡した万丈が、その瞬間に泣いていた(勝村さん談)ってのがもう地獄で地獄で、あの時点で少しでも万丈に意識が残っていて、自分の身体が戦兎を蹴り倒すのも、雨に打たれる戦兎から離れることしかできないのも、待ってろって言ったのに敵になっちゃってるのも、全部理解できてたらあまりにもツラすぎる……エボルフェーズ3の白戦兎にも、エボルトが「見てるかぁ戦兎?」って話しかけていたから、操られてても少しは本人の意識が残るんですかね。そうだよね、じゃなきゃ戦兎の叫びでボトルが金色に光ったとき、ブラッドの中で銀色の光が呼応するわけないんだもの。じゃあ、互いが互いを傷つけたってわかっていながらやってたし、いざ意識を取り戻して顔を合わせたら、そんなのありましたっけ?みたいな顔して軽口言い合ってたってことか戦兎と万丈、おまえたちってやつは……!!!

ずっと戦兎は万丈のことを「正義のヒーローとして万丈を守ってやれるのは俺しかいない」と思ってたし、万丈は万丈で戦兎のことを「自分の明日を創ってくれた恩人の戦兎を、助けてやれるのは俺しかいねぇ」って思ってたし、互いが互いを思いやってるんだけどどっか自分よがりというか、意識が微妙にすれ違っていて、共闘というより共依存に近いくらいだったし、そうなるように敵が仕組んでいたわけなのだけれど、ここにきてようやくふたりが対等に、背中を(もとい、身体をまるごと)預けられる関係になったんだなぁとものすごく感慨深かった。この1年、よくぞその絆を育て上げてくれました。

いやー、これでさすがに、本編の万丈ラスボス説は潰えたであろう。仮面ライダー剣の二の舞になったら泣くしかないぞ。

それにしても金銀の二重らせんでラブ&ピースフィニッシュって、何度見ても「いったい自分はいま、何を見せられているんだろう……」って、なんだかちょっとこっ恥ずかしい感じもあるのだ。うーん、ブロマンス。*6

戦兎と万丈よ、永遠に。

桐生戦兎と葛城巧の対比

「俺の全ては、創られたものだった……」
「その通りだよ。キミは理想の中で溺れていたにすぎない」

戦兎と万丈の絆、すごくよかった。しかし今回、それ以上にグッと来ちゃったのが「ビルドが戦う理由」の掘り下げなんですよね。平ジェネFinalで唐突に語られたラブピが、こうやって使われるのは綺麗だなぁ。葛城忍の科学者としての信念こそ「ラブ&ピース」だったというのは後付けっぽいけれど、それでも、記憶を失ったはずの戦兎にもそれが受け継がれていたという描写*7には最高に泣かせてもらった。なんなら冒頭の、学生だった頃の葛城巧目線でスカイウォールの惨劇を見る場面、忍パパが眼前にいたところからすでに泣いてた。逃げ惑う人々の向こうで葛城忍が高らかにピースサインを送るあのシーン、あまりに好きすぎて何度見ても息を飲んでしまう。

やっぱ科学者(技術職)ってめっちゃカッコいい職業だなって思うんだ。葛城忍も巧も、全然ヒーロー感のない一般人なところがすごく、いいんですよ。それを仮面ライダーで、時間を割いてやるってのが最高なんですよ。ちびっ子もあれを見て、葛城忍みたいな科学者に憧れてくれたらいいなぁ。

46話、猿渡一海がみーたんのタオルを嗅ぐか嗅がないか葛藤したときに、小さな天使カズミンと小さな悪魔カズミンが出てきたじゃないですか。白い部屋はあれの豪華版で、葛城巧は悪魔側の桐生戦兎であり、桐生戦兎は天使側の葛城巧なんじゃないかなと思って見てました。どっちも自分、どっちも本人ですよ。ビルドは桐生戦兎が主役の物語なのだから、白い部屋のパートは必須だと思う。なんだかんだとネガティブなことを言いながら、それでも一番近くで、戦兎が立ち止まらぬように、世界を救うべく助言し続ける葛城巧はすごくいい。あのラストで、葛城巧から見た万丈龍我が、少しでも前向きな存在として認識されるようになっていたらいいな。

でも、個人的には葛城巧が「万丈龍我を殺すべきだ」って言ってるのも大好きなんですよ。確かに、科学の目で見た合理的な判断だもの。巧も、巧なりに「ラブ&ピース」のためだと起こした行動が、ビルドドライバーの開発と万丈龍我を倒すことだったってのが、たまらない。忍パパの発言に際し、戦兎は万丈を救おうとして、巧は万丈を倒そうとしたの、ほんと罪深くていい。ひとりの人間に、どちらの意識もあるってことだもの。桐生戦兎も、心のどこかには「万丈は危険分子になるかもしれない」って思いを抱えてるってことだもの。その感じが、うまく言えないけれど大好きなんだ。

ビルド劇中では桐生戦兎が度々、葛城巧の夢を見ていましたが、記憶を奪われた葛城巧が、無意識のうちに夢見た“仲間を信じ、相棒と共に、見返りを求めず愛と平和のため戦う理想のヒーロー”が桐生戦兎なわけですよ。そんなのもう、たまらないよね。

ジーニアス登場回で葛城巧が吸収された頃は、葛城巧はそのまま巧としてあるべきだと思っていたけれど、最近どうも戦兎と巧の境界があいまいになってきたというか、共有できるものが増え、歩み寄ってきたというか……「おまえ(巧)にはわからない。あいつ(万丈)は大切な相棒なんだよ」って、それを教えたから、実際に上手くいってブラッド族を倒せてしまったから、葛城巧も、万丈龍我が桐生戦兎の相棒であることを思い知らされただろうし……。劇場版を経た最終回で、葛城巧の物語がどのような結末に落ち着くのかについても目が離せません。

「嫌われても、存在を否定されても……誰かの明日を創ってあげられるなら、それでいいんだ」

誰からも求められていない(むしろ、仮面ライダーは軍事兵器として、平和を愛する庶民からは疎まれている)のに、仮面で顔を隠して、賛辞や名誉のためでなく、ただただラブ&ピースのために戦い続ける。3話の「見返りを期待したら、それは正義とは言えないぞ」って台詞を思い出します。

ラストの白いパーカーを着た戦兎が、フードで顔を隠して、雑踏をすり抜けて、万丈、美空、紗羽、一海、幻徳のもとに走ってくる場面だけでも、ものすごく煮詰めた仮面ライダービルド感があって素晴らしかった。誰からも認められず、例え存在を否定されても、ナシタ組だけは、万丈龍我だけは、戦兎がヒーローであると認めてくれている。やがて、冒頭で助けた民間人の姉弟のように、直接戦兎に助けられた人たちも、仮面ライダービルドを正義のヒーローとして認識するようになるかもしれない。あの少年は、今回あまりにも救いのなかった戦兎にとっての希望の光なんだろうなぁ。*8

それにしても万丈、めちゃくちゃ堂々と外出するようになってたけど冤罪設定は……、あれかな、やっぱ氷室首相が、仮面ライダーを軍事起用した頃にどうにかしてくれたのだろうなぁ。変装ばっかりだった万丈が太陽の下を堂々と歩けるようになって、逆に戦兎が顔を隠しながらやって来るようになるってのも、ほんとおまえたち……って感じで尊い

そのほか、気になったところ

メインテーマの他に、楽しかったのは、武闘派な紗羽さんと、ヒゲポテトwith内海の漫才(ヒゲェェェエエエエ!!!?が完全に銀魂の世界だった、)でしょうか。ヒゲの土下座芸は一番の笑い声が上がって、登場するたびに子供たちが「笑っていい場面がきた!」とホッとしてたみたいなので、幻さんへの路線変更は必要悪だなぁと痛感しました。紗羽さんあんな技持ってたのか、そりゃ強いわ……美空ちゃんも役が役なら忍者技を繰り出したろうに無念。うっかりときめいたのは、逃げるビルドがビルドフォンで犬の写真撮り始めたところ*9ですね。戦兎がわんこを見ると「はぁ~天使ちゃ~んっ!!!こっちおいでぇ、いいよ俺がそっち行くよ!!!(*゚∀゚)=3」って写メがしがし撮る人間だって、もっと早く言ってよねそんな大事な話……!笑

劇場版での活躍ぶりが、
一般市民女子学生>紗羽さん≧ベルナージュ>美空
なのは、ものすごい思いきったもんだなと思った。やはりメインヒロインは今回も万丈龍我……?

いやしかし、秘密基地でらせん階段を転がり落ちた戦兎に向ける、美空ちゃんの豪快なスライディングは何度見ても綺麗に決まっていたりする。直後の紗羽さんがすごすぎるので、あんまり印象に残らないのがもったいないですけど。

内海、あれしか出番ないのに舞台挨拶で話すことなくない……??? もとい、内海の数倍出番がある葛城巧に舞台挨拶の声がかからない……??? と、大人の世界の闇を感じなくもない。46話で、内海が何か対エボルトの秘策を仕掛けたようだったので、映画でその心情描写があるのかなと思ったらなにひとつ描かれなくて、それでこそ内海……と不遇っぷりが目に染みます。マッドローグとは。スクラッシュドライバー両手に満面の笑み浮かべる内海は本当に美味しかった。越智くんは自然とスイーツ部だとか女子会に入れてもらえていて、好きだなぁ。

戦闘面は正直、グリスとローグのほうが見ごたえがあった気がしました。グリスのダブルツインブレイカーを駆使したロックとローズのダブル束縛だとか、ゼリーがブシャアアアッといくスクラップフィニッシュも大盤振舞で嬉しくて。あの技、シティーウォーズでめちゃくちゃ頼りになりますよね。クローズビルド対ブラッド戦は、CGが多すぎたのと、両者ともなぜか時々ジャガーアンデッドさんみたいなシャカシャカ走り*10するのが、どうしてもおもしろくって笑っちゃって耐えきれない……銀龍と金兎を召喚して、乗ったり蹴ったりして一緒に戦えるのはとてもカッコよかったです。

ラブ&ピースフィニッシュとかいうDNAの二重らせん蹴りも、わりと地味だったけどそのまんまで(あそこまでストレートな表現するとは度胸あるなって感じで)大好きだな。二本鎖の片方が金色でもう片方が銀色なのは、戦兎と万丈は相補的な関係だよ、っていう暗喩なのもしれませんね。

石動エボルトがまた、ズルかったですねぇ。戦兎を回収して、目の前でコーヒー淹れて状況説明して余裕かましてるの、カッコよすぎかよ。で、極めつけに「あんたに俺の何がわかる!」って飛び出していった戦兎の背中を見送って呟く「おまえよりわかってるよ。俺たちが、桐生戦兎を創ったんだからな」カッコよすぎかよ。こんなときばかり父親面するの、最高にカッコよくて酷かった。でも、戦兎を助ける暇があったら、万丈が拉致される前に手を打ったほうが面倒にならなかったんじゃないかという気も……いや、やっぱり戦兎にブラッド族をまとめて倒させるつもりだったのかな。今となっては、エボルトにとって万丈はもう必要ないだろうし。この人、映画でこうやっておきながら46話で10分ごとにブラックホールで地球吸ってるんだもん。地球外生命体、わけわからなさすぎ!

尺の都合でブラッド族そのものはあんまり印象に残らなかったのが残念。藤井隆はエキストラで参加したときにサービス精神旺盛なところを見せてもらってファンになりました。松井さんは思ったよりセクシー女性幹部で、アフレコもお上手。で、なにより勝村さんですよ……大好きなんだよ勝村さん。好きな脚本家である木皿泉作品に「パンセ」ってやつがあって、勝村さん演じる引きこもりのお坊ちゃん、力丸、めっちゃ好きだったんですよ。私わざわざ、映画観に行く心構えとして見返したもん。やー、万丈を洗脳する人外ムーヴ、万丈を返してほしければパン箱を渡せとぶちギレるところ、かっこよかった。ところで、伊能・郷原・才賀の三人は地球外生命体の擬態だったのだとすれば、本物は石動惣一のように生きているのか、それとも難波会長のように消されてしまったのか……ブラッド族は元々無慈悲っぽいから、消されたんだろうなぁ。

主題歌「Everlasting Sky」よかったですとっても!
藤林さんが戻ってきた。1番は戦兎っぽく、2番は万丈っぽいかな。スカイウォールのない平和な世界、あと3話で実現できるのかどうか……。

あとはまぁ、野暮なこと言うなら、

・なぜビルドで逃げるのにロケパンさんやニンコミさんを使わない。空を逃げると本物の機関銃で撃たれて被害が広がるから、かなぁ。ジーニアスならもっと効率よく逃げ切れたのではないか、ジーニアスあんまり活躍できませんねぇ。
・生身で逃げるのに、謎小型爆弾で景気よく路駐の車を吹き飛ばす天才物理学者はちょっと笑ってしまった。そして秘密基地に備わっている催眠ガス。そんなもん仕掛けてあったのか、さすが天っ才物理学者……。
・あい変わらずスマホで律儀に「万丈を返してほしければ、パンドラボックス持ってこい」って連絡よこすブラッド族。うーん、それでこそビルド。万丈を操って奪いに行かせるような、オシャレじゃない真似はいたしません。
・なぜ仮面ライダーブラッドになるために万丈とハサミとシマウマ吸ったのか。パンドラボックスの力を使ってコアに迫る(パンドラタワーの地下版を創る?)ために万丈のエボルト遺伝子が必要なのはわかったけど、結局、万丈もハサミもシマウマも抜け落ちちゃっても、ブラッドの姿はそのままだったもんなぁ。
・何度観ても「精神的にお前を追い込んで、トリガーにチカラを集めやすくするためだ」という石動エボルトさんの台詞の意味がいまいちよく理解できません……なんで戦兎が弱るとチカラが集めやすくなるんだろう。カッコいいからいいけど……。
・クローズビルド缶(CROSS-Z BUILD CAN)とかいう「万丈と戦兎ならできる」のエモさは抜群だけど、そのまま金兎と銀龍フルボトルを填めて変身したらどうなっていたのかは気になる。玩具の仕様上仕方がないとはいえ、劇中でもただのトライアルフォーム扱いだったら悲しいなぁ。*11
・生まれて初めてエキストラに参加したけれど、そのとき見聞きした展開と、大きく変更されたのかな?という気がした。石動エボルトが、妙な台詞を言ってたんだよなあ。最終回に向けてその辺りが具体化するんだろうか。それとも没案として、なかったことにされるのだろうか。*12

総合的には、戦兎(巧)の心理描写だけなら仮面ライダー劇場版のなかで一番好きかも。戦闘面含めちゃえばちょっと微妙。どんなに破綻した筋書きでもけっこうおいしく楽しめるタイプではあるので、細かいところはそんなに気にしない私でも、歴代ライダー映画で「圧倒的尺不足ランキング」を作ったらぶっちぎり1位狙えるんじゃないかと思ったほどに、惜しい感じもしたなぁ。戦兎と万丈を全面的に押し出すのなら、もうちょっと見せ方があったんじゃないかしら。無音演出は好きなんだけど、子供に見せる特撮映画としたら控えてもよかったかもしれないし、北九州が見所なのはわかるんだけど、逃亡パートを少し削ってもよかったかな。でも、仮面ライダーが殺意を抱いた民衆から追いかけ回されるっていう絵面は単純に面白かった。国民の全てが敵にまわって、唯一の味方が石動エボルトだったのも皮肉が効いていて、辛いけれども、やっぱり好きだ。

テンション上がりまくってくどくど長ったらしく好き勝手に書きましたが、一緒に観てもらった人曰く「ルパパトと、ジオウの“とうっ”しか覚えてない」とのこと。まぁ、あれだけジェットコースターみたいな急展開で戦兎と万丈のあんなことやこんなこと*13を見せつけられたら「いったい私は何を見せられてるんだろうか」ってなるのも頷けるわけで、ビルド未視聴の普通の感覚だと、総じてあんまり印象に残らない劇場版、そんなものなのかもしれません。

*1:仮面ライダーのコンビなら、剣崎&始、剛&チェイスがとても好きでした。

*2:後日ファイナルステージにて、クローズビルドを生で拝見することができました。

*3:まだわからないのか、万丈は破滅を導く存在なんだ!と言い続けてきた巧が、だとしても……って折れるのも興味深い。

*4:さすがふたりで相談して偉い人と戦って、台本に何度書かれようとも一度もやらずに、スラムダンクがやりたかったと舞台挨拶でにこにこ話していただけのことはある。万丈「俺はキャラ的に桜木花道だよね?」って戦兎に確認しててめっちゃ可愛かった。

*5:ジオウ時空でツナ義ーズになってたら喜んでCD買う。と思ってたらツナ義のファンでした、無念。

*6:と公開当時は思ったけれど、これはブロマンスでもなく、同性愛でもなく、ベストマッチという概念なのだよな。ブロマンスは、お互いへの好意を包み隠さず伝え合うイメージがある。

*7:犬飼氏によれば、父親との信念被りは偶然の産物で、あくまでも戦兎は戦兎の信念としてのラブピだったらしい。それもそれで良い話だ。

*8:最初に少年から「おじさん」呼びされて、戦兎が「いいか。おじさんじゃない。お兄さんだ。んっ?」つって「んっ?」のときに文句は言わせねぇよ?みたいな顔するのがおかしくて最高に好き。

*9:舞台挨拶で犬飼氏「なにやってんの高岩さん!?」と思ったとのこと。ヒゲポテトは戦兎と万丈を助ける直前までめっちゃコントしてたのにばっつりカットされてるわ、東都制服時代の内海と幻徳の場面もばっつりカットされてるわ、カットされた部分がめちゃくちゃ多かったらしい。尺が足らない。

*10:仮面ライダー剣のラウズカードに封じられてる足の速い怪人。キック+サンダー+マッハ=ライトニングソニックのマッハ担当。

*11:みんな大好き最終回限定フォーム、仮面ライダービルドラビットドラゴンフォーム!!!

*12:僭越ながらちらりと映っており、北九州には行かなかったのに行ったことになっていて、編集のチカラってすげー!と思った。勉強になりました。

*13:OKOSの万丈曰く「戦兎と俺があんなことやこんなことになってるってのに、まだ観てないっていうのかよ!?」